2024年が始まったところで、主力商材でもあり問い合わせの多いKUALIS CYCLESについて幾つかのお話を。
1. 使用基準のパイプについて
自転車パイプメーカーなどから市販されている、いわゆるメインチューブのダブルバテッド管の厚さは T0.9/0.7/0.9mm あたりが一般的です。
この厚めのストレートパイプを使って、個人個人に合わせて工房内でバテッド加工(中央部分を薄く削る加工)を施します。
*用途により0.65~0.80までの4種類の厚さで加工
バテッド加工することにより軽量化をしているわけですが、パイプの両端は厚いままの状態です。要するにフレームの捻れ/ 応力が発生するジョイント部分はより高い剛性を保ったままで軽量化できるわけです。
例えば、市販メーカーのバテッド管/ 外径41mm, t0.9/0.7/0.9 に対して、KUALIS のバテッド管は外径38mm というようにワンサイズ小さいもので同等の剛性を保持したパイプを製作できます。
これは何を意味するかと言いますと、より様々な剛性値の異なるパイプを作れるということです。すなわちそれは、より多くのサイクリストが求めるライドクオリティーに対しての対応幅が広がるフレーム作りができるということです。
このバテッド加工はメインチューブ(TT, ST, DT) で行います。
リア (CS, SS) に関しては行いません(特に必要なし)。その理由は次のポイントに関係します。
2. 走行状況によるフレームにかかるストレス値。
*TT (トップチューブ), ST (シートチューブ), DT (ダウンチューブ), CS (チェーンステー), SS (シートステー) について。BB, HTは含まず。
Frame stress distribution for road bike
-Constant speed condition(巡航時)
TT – 37%, ST – 28%, DT – 19%, CS – 8.5%, SS – 7.5%
-Climbing condition(クライミング時)
TT – 11.5%, ST – 18%, DT – 59%, CS – 7.5%, SS – 4%
-Braking condition(ブレーキング時)
TT – 25%, ST – 8%, DT – 58%, CS – 6%, SS – 3%
ロードバイクで、上記の条件で走った場合フレーム内でのストレス度合いがおおよそ理解できます。基本的に前三角(メインチューブ)はストレス値が大きく、リアは少ない値になります。それはフロントとリアの構造の違いによるものです。
その昔、サイクリストの一人が走行中に踏み込むとリアのギアが勝手に変わるということで、あるビルダーさんがチェーンステーを太くすれば良いと言っていたことがありました。
しかし実際はそうではなく、まず疑うべきはダウンチューブの剛性です。
フレームのフロントがパイプ1本づつの捻じれやすい構造に対して、リアは2本づつの計4本によって構成される上、アクスルで車輪を固定することによって剛性が確保されます。
剛性を上げるためにチェーンステーだけを太くすることにあまり意味はありません。
建築構造力学などでも出てきますが、いわゆるトラス構造などの基礎知識があれば想像するのはそんなに難しいことではありません。
フレームのどの部分に注視して、サイクリストの要望に合わせてどのように剛性を操作し、バランスのとれたフレームを作るか。。。適正なサイズのパイプを選び、工房内でバテッド加工を施すのはそのためです。
この作業は地味で大量の蓄積が必要となりますが、KUALISで考えているフレームの中身はそんな感じです。
時には、似通ったライドクオリティのフレームができる場合もあります。実際乗り比べると違いがわからないくらいに近いものもありますが、こちらで制作する上で数値上違うものはフレームとしては異なります。一般のサイクリストにはほとんど分からないから無視する、、、ではなく、数値上で違いが出るならば出来るところまで突っ込んであげることもオーダーフレームのあり方の一つかと考えています。
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